どうしようもない彼はどうにかなるのか①
「少し距離を置こう。」
そう提案したのは私だった。
付き合って4年。当時29歳。
進めるにしても止めるにしても、もうマンネリからは卒業したいタイミングだった。
H氏は、育ってきた環境が180度違うタイプ。
だから、刺激的だった。
全く正反対なところからやって来た二人。
同じ職場×遠距離っていう、微妙?絶妙?な距離感のお陰で心地よい関係が続いてた。
H氏は、女性関係の評判はよろしくなかった。
本気になると火傷するぞ。
そんな気持ちがあったから、常に冷静な感情を見失わないように用心するクセがついていった。
それが、何かあっても傷つかないための予防線。
自分の守り方だった。
4年間の間に何度か浮気をみつけた。
やっぱりどうしようもない男だった。
そういう危機もその都度乗り越えた。
それで終わりにするわけにはいかないから。
そんな終わり方されると自分が惨めだから。
終わり方は私が決める。
浮気が発覚するたびに、大袈裟なパフォーマンスと謝罪が繰り広げられた。
幸い(?)フラれることもなかった。
もう絶対しない
本当に愛してるのはあなただけ
一生大事にする
これからは変わるから
…etc…
言われて悪い気はしなかった。
でも、心から許しはしなかった。
彼も落ち着いてきて、事件も起こらなくなった。
私が30になる前に結婚とかした方が良いんじゃないかな?とか、そんなこともぼんやり考えてるようだった。
いつも具体的ではなかったけど。
でも、彼との結婚は考えられなかった。
どうしようもないところは、治らない。
今は落ち着いてるけど、いつまた発作がおきるかとビクビクしながら過ごすのはごめんだ。
恋愛は、多少の波風も楽しめるけれど、生活に波風が立つのはごめんだ。
そして何より責任感から結婚が形になるのは避けたかった。
もう潮時だ
そうして、距離を置いてみようと提案した。
彼もその提案を飲んだ。
実は待ってたのかもしれない。
私が離れるのを。
4年付き合った三十路手前の彼女に責任を感じつつも結婚に踏み切る覚悟もない。
いつもそうだった。
自分からは重大な決定は言葉や形にはしない。
そして、2週間ほどたった休日に会うことになった。
「別れる」というカードを忍ばせて、私は待ち合わせ場所へ向かった。
続く