声なきもの
私は小さい頃からマンション暮らしだったことや、親がペットを飼うのを良しとしなかったことから、生き物を育てたことがなかった。
かろうじて、おまけ?についてた、「カブトエビ」(カブトガニだと天然記念物。見た目は似てて小さい)と、カブトムシとクワガタとコウロギはある。
あとは、サボテン。
癒し系じゃないな。
社会人になって、職場に生き物を置くのが好きな上司がいた。
上司と言うか役員だったから、ほぼどのオフィスにも、熱帯魚や観葉植物がいた。
お客さんや子供も来る場所だから、そういうものがある雰囲気を大事にしたかったんだと思ってた。
私も、熱帯魚や観葉植物の世話を任された。
2日に一度は水槽をきれいにし、1週間に一度は水替えをする。
観葉植物の方がまだ楽だったけど、あまり水をあげてはいけなかったから、またその加減も難しい。
そんなこんなで、業務を圧迫しながらも自分なりに世話はしていたけど、水槽は藻が増え、予期しなかったエビが増え、ヒーターが壊れ…
観葉植物さえも枯らした。
もう、私には無理ってことで、その役目は外された。
そしてほっとした。
職場に生き物を置くのが好きなだけだと思ってたけど、あるとき言われたことが
「声なきものの声にいかに耳を傾けられる
か」
ということ。
サービス業に従事するものとしての姿勢。
ともすると、主張の強い人やクレーマー、声の大きな人に目がいって、対応も優先になりがちだったり。
けれど、本当に大事にしないといけないのは、声も小さく要求もしない人たち。
そういう人たちは、主張しないかわりにいなくなる。
熱帯魚や観葉植物は、自分から何も要求しない。
けど、そこに配慮できるか。
ほっとしてる場合じゃなかった。
売上とか目標達成とかそういうところは、はりきってたけど、社会人として、ダメダメだった。
世間知らずで箱入り娘な自己中な私の社会人1年目の頃の話。
そんな子だったから、かなりこてんぱんにやられたけど、ほんとよかった。
今ならわかる